【HSP】ネガティブ思考に感謝する日常

気楽に賢く、正しく生きて行きたいHSPでネガティブな日常を綴ります。

【映画】ファイティング・ファミリー・主人公が語るストーリー(ネタバレあり)

 

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「痛い!ザック」
私はサラヤ13歳、今信じられないけどプロレスのリングの上で兄と戦っている。
両親や見慣れた近所の人たちが私が痛めつけられる度に身をよじって興奮している。
こんな痛みは18歳の今にも続いている。ずっとイギリスの田舎ノーウィッチで兄とリングで取っ組み合いをやってきた。これなくしてはうちの生活は成り立たない。
 
13歳のころは言われるがままにただただやっていただけだった。
 
時を重ねるにつれてプロレスがどんどん好きになった。そしてアメリカのWWEでチャンピオンになるのが兄と描く夢になった。兄はずっと私の引き立て役だったけど、私よりずっと強いし技術も上で私も含め子供たちへの指導もしていた。
 
兄の彼女が妊娠し結婚しようという時、何とWWEのトライアウトに兄とチャレンジすることになった。私は兄と一緒に受かるつもりでいたが自分だけ受かってしまった。兄への後ろめたい気持ち、両親や地元の人たちの期待というち真逆の色合いの気持ちを持ちながら前だけを見てフロリダへ旅立った。
 
養成所での生活は過酷だった。知人と言えばトレーナーのモーガンのみ。モデルとしか思えない女子レスラー達の存在が一番心と体を虐げていた。アメリカ人、容姿に対する劣等感、疎外感。「ザック!お父さん、お母さん!会いたい」毎日心が叫んでいた。
 
完全に自信を失って私は信じられない行動に出た。黒髪を金髪に染めて口ピアスも外してひたすら「彼女たちに近づきたいと」と行動していた。結果的に周囲も自分も好転することはなく益々負の方向に追い込まれて行った。
 
ついにモーガンに本音を吐いた。「ザックと一緒にやりたい」秘めてきた心の声を口にしていた。「技術は自分より下の彼女たちが受かって、何でザックが落とされるのか??」どんどん心の中で大きくなっていた岩のような疑問をぶつけていた。
 
モーガンの考えは深い。自分だけ選んだ理由を理解せざるをえなかった。もう限界だった。心の弱さを指摘され厳しい言葉に勢いでリタイアを決意していた。
 
クリスマス興行に合わせて帰国した。まず兄に気持ちを打ち明けたが反応は厳しいものだった。クリスマス興行で久々に心地いい地元の声援を浴びながら上がったリングで、兄はアブノーマルな戦いを仕掛けてくる。違和感はあったもののまだ兄の心のうちを完全には分からなかった。兄の心も乱れていた。心をぶつけ合いワンネスになることが出来た。自分以上に一戦で活躍することを志す気持ち「こうじゃない」という耐えがたい矛盾。「代わりたい、お前になりたい」兄の心の声が突き刺さった。その剣を引き抜いて再びフロリダへ向かった。
 
リターンしてからは、イギリスで家族と頑張っていた本来の一女子プロレスラーに戻っていた。ネガティブな気持ちは完全に払拭され生まれ変われたことに一番驚いたのは自分だったに違いない。自分が変わると周りも変わり、能動的かつ受動的に次々良いことが引き寄せられてきてきた。『WWE・ロウ』でデビュー、自己実現を目の前にしていた。
 
大歓声が心地よく全身に響く。目の前にいるのはチャンピオン、AJ・リー。無心に戦っている時、ザックも両親も地元の人たちも皆一緒だった。相手を倒すことが勝利じゃなくて自分を出し切ることが勝利という気持ちで挑んでいた。相手は誰でも同じだったように思う。スローモーションのように景色は静かに動いていたい。
 
憧れのチャンピオンベルト。兄と工作して作ったベルトが頭をよぎっていた。
これを手にしているのは自分だけじゃないフロリダ養成所で共に特訓に明け暮れた同僚たち、モーガン、そして育ててくれた両親、自分に輝きを与えてくれた兄。ベルトの重みは次第に現実味を増していた。
 
「ありがとう」心からの感謝の波動がスタジアムの観客の声援と一体化して世界に向かって広がり続けていた。